もし妻が癌になったら、夫のあなたはどうしますか?

 

かんさい情報ネット ten.』という情報番組をご存知でしょうか?関西ローカルで、平日の夕方に放送している番組です。うちの妻は、この『ten.』の最後の、その日に生まれた赤ちゃんを紹介する『めばえ』というコーナーが好きで、夜はいつもテレビのチャンネルが10chに固定されています。

 

ある日、妻が1冊の本を欲しいと言い出しました。それが今回紹介する『112日間のママ』。『ten.』のメインキャスターである清水健さん(愛称:シミケン)の著書で、奥様との闘病生活を綴った本が、もうすぐ発売されるから買ってきて欲しい、と。(本書を購入したのは2月。今までレビューを書かなかった理由は後述)

大変申し訳無いことに、妻に教えてもらうまで、清水アナウンサーがそんな大変なご経験をされておられたことすら知りませんでした。

会社帰りに買ってきた本を渡すと、「活字を読むと眠くなる」といつも言っている妻が即座に読み始め、次第にボロボロと泣き出しました。そしてぜひ自分も読んで欲しいと薦めてきたのです。

 

実は、僕はかなり物語に没頭する方で、作品の雰囲気にめちゃくちゃ流されます。最終的に死別してしまう物語については、悲しみに押しつぶされてしまうので、どんなに名作だ、感動作だと言われても、できるだけ避けてきました。

あまりにも薦めてくる妻に根負けして読み始めたものの、奥様の闘病生活を支えようとする清水アナウンサーの必死さが伝わってきて中断。だいぶ日を開けて、しっかりと覚悟して、一気に最後まで読んでみたのがつい最近、というわけです。

 

闘病生活を支える夫としての苦悩、過酷な現実への怒り、奥様が死別されたことへの深い悲しみ……。僕にとってはもっとも苦手な内容のはずなのに、最後まで読んでみて感じたのは、「自分の家族への愛情」でした。

なんでだろう?と思いながら、あらためて読み返してみて気づいたのですが、本書は闘病の記録ではありません。本書はラブレターでした。「支えてくれてありがとう!君のこと絶対忘れないよ!頑張るからね!」という、奥様への感謝と愛に溢れていたのです。

 

これはぜひ、世の中のパパ全てに読んで欲しい本だと強く感じました。僕がそう思った理由について、本書の内容の紹介と合わせて、簡単にまとめさせて頂きます。

 

『112日間のママ』のあらすじ

『かんさい情報ネット ten.』のメインキャスターを担当しておられる清水健さんは、2013年6月に同番組のスタイリストをしていた奈緒さんと結婚されました。

翌年2014年4月に奈緒さんの妊娠が発覚。幸せの絶頂だったのもつかの間、なんと乳がんが見つかってしまいます。さらに悪いことが重なります。ただでさえ若年性の乳がんは進行が早いと言われている中で、奈緒さんの乳がんは、特に悪性度が高く進行も早い「トリプルネガティブ」の乳がんだったのです。

そしてつきつけられる命の選択、「出産を諦めるのか、諦めないのか」。

奈緒さんの、強い、本当に強い想いに支えられ、お二人はお子様も含めた「三人で生きる道」を選択します。

紆余曲折は有りましたが、命がけの出産を終え、無事にご長男が誕生。しかし病魔は確実に奈緒さんを蝕んでいました。伝えられたあまりにも残酷であまりにも短い余命……。

そして闘病の末、逝去された奈緒さん。長男が生まれてたった112日後のことでした。

 

本書では、清水健さんと奥様の奈緒さんの、出会い、結婚生活、妊娠、病の宣告、出産、家族の最後の旅行、別れ、とお二人の貴重な夫婦生活を追体験することが可能です。

大部分は清水健さんの感情の吐露がまとめられており、同じ状況において自分が何を感じるだろうか?ということをかんがえさせられる書籍となっています。

 

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『112日間のママ』における「強さ」と「弱さ」

僕が本書を読んで感じたのは、「強さ」と「弱さ」でした。それぞれについて、くわしくご紹介させていただきます。

 

女性の「強さ」

あの微笑みの裏には壮絶な強さとすさまじいほどの執念があったと私は確信している。すべてをわかって受容し、自分の苦しみより夫の苦しみを少しでも和らげることが電技ではなく本能的にできる女性だったのだ。29歳にしてこんな女性がいるだろうか。

まず感じさせられたのが、奈緒さんの「強さ」でした。

体を病魔に侵されながら、辛い素振りも見せず、気丈に夫の清水健さんをささえる「妻としての強さ」。そして、子どもを生むことを強く希望され、それこそ最後の一滴まで自らの命を絞り出し、無事に息子をご出産された「母としての強さ」。

その生きざまのなんと「優しく」、なんと「強い」ことか……。

僕は本書を読みながら、奈緒さんの強靭な精神力に、体が震えるのを抑えられませんでした。

 

男性の「弱さ」

でも、苦しみも、怖さも、痛みも、すべてを背負ってくれていたのは奈緒だった。
僕が背負ってあげようとしていたものを、実は奈緒が全部背負ってくれていた。奈緒は最後まで、僕に笑顔しか向けなかったのだから。

そして次に思い知ったのが「男の弱さ」。

男ってバカなんですよね。普段かっこつけてるくせに、いざというときに本当に脆い。もし自分が同じ立場だったら……と考えると、本当に何もできなくなるんじゃないかと怖くなりました。

きっと清水アナウンサーは、ご自身の「弱さ」を自覚しておられたんだと思います。そして、その「弱さ」を飲み込んで、奈緒さんのためにあがきにあがいたその姿勢を、僕は心の底から尊敬します。

本書には、同じ男だからこそ共感できる迷いや嘆き、同じ男だからこそ驚愕する清水アナウンサーの格好良さが詰まっています。

 

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『112日間のママ』が出版された意味

本書は、本日時点(2016年6月13日)で、Amazonの「闘病記」というカテゴリでベストセラー1位となっています。

しかし、「病と闘う側」ではなく「病と闘う人を支える側」であった清水アナウンサーの著書ということで、本質的な意味で、現在闘病中の患者さんが読んで「死の恐怖に立ち向かうためのもの」ではないと感じています。

だとするならば、本書が出版された意味はどこにあるのでしょうか?

僕は「自分たちの選択を信じることの尊さ」を伝えるためではないかと考えています。

 

本書の最後に、このような一節があります。

僕らの選択は、僕らにとっては「正解」だった、誰になんと言われようとも。そしてこういう「夫婦の選択」があった、ということをひとつの参考にしていただければと、切に願います。

人生には「セーブポイント」も「リセットボタン」もありません。どんなに悲しいことがあっても、苦しい状況になっても、その時々で最良だと思ったことを選ぶしか有りません。

重要なのは、目の前の選択を「自分で選ぶこと」。自分の人生を自分のものとして生きるために、最後の最後は自分で選ぶしかないのです。

 

まとめ:平凡な毎日に心から感謝を

ここ数日の世間の動きで言えば、市川海老蔵さんの妻・麻央さんが乳がんになり、手術ができるように投薬治療中ということで、その病状の深刻さも含めて本書の内容と非常にかぶるものがあります。

もし自分が同じ立場になった時、自らの弱さを飲み込んで、清水健さんや市川海老蔵さんのような毅然とした振る舞いができるかと聞かれれば、正直自信が有りません。

泣きわめいてしまうでしょう。何もかも投げ出して、ただただ治療のために駆けずり回ってしまうかもしれません。

それでも、本書を読んだことで、一定の「覚悟」を貰えた気がしています。

 

世の中の全てのパパさんへ。

ぜひ本書を読んでみてください。そして自分だったらどんな選択をするか考えてみてください。

あなたは、日頃、奥さんに感謝の気持ちを伝えていますか?代わり映えのしない毎日を、平凡だと嘆いていませんか?

その平凡は、実はとてつもなくありがたく、「幸せな日々」かもしれませんよ。

 

以上、TSUNJI(@tsunji1983)でした。

 

追記:著者の清水健さんからコメントをいただきました

記事を公開してすぐに、著者の清水健さんよりコメントをいただきました。とても丁寧な対応にほんとうに頭が下がります。もっともっと『112日間のママ』の輪が広がっていってほしいですね。

 

 

参考:『112日間のママ』の目次

参考までに、本書の目次を載せておきます。「 これは!』と思うところがあればぜひ読んでみてください。

第1章 出会いから結婚まで

第2章 妊娠直後に乳がんが発覚

第3章 闘病。竹富島へ最後の旅行

第4章 緊急入院。最後の別れ

第5章 番組へ復帰

あとがき

奈緒へ