小説

『余命10年』感想|死と向き合うことで精一杯生きたいと思わせてくれる

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あと10年しか生きられないとしたら、あなたは何をしますか。

小坂流加さんの『余命10年』を読みましたので、私の感じた魅力をご紹介します。

【書籍情報】
題名 :余命10年
著者 :小坂流加
出版 :文芸社文庫NEO
発売日:2017/5/15
本の長さ:304ページ(Kindle換算)

おすすめ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★☆

読了:2024/05/07
媒体:PrimeReading

※PrimeReadingは月に数十冊の入れ替わりがあるので、タイミングにより閲覧できない場合があります。最新情報は公式HPをご確認ください。

本書との出会い:映画を見る前に原作に触れたかった

私はAmazonプライムを約10年ほど愛用しておりまして、趣味の1つである映画鑑賞は『Prime Video』で楽しんでいます。

このPrime Videoで「あなたが興味のありそうな映画」のなかに、小松菜奈さん×坂口健太郎さんが主演の『余命10年』がオススメとして出てきました。

「どっかで見たことあるタイトルだな~」と思っていたところ、PrimeReadingで原作小説を読むことができると判明し、映画を見る前に原作を楽しむことにしました。

 

あらすじ

第6回静岡書店大賞 映像化したい文庫部門 大賞受賞作
20歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。涙よりせつないラブストーリー。

Amazon商品ページより

 

私が感じた『余命10年』の魅力

現実味のあるキャラクターたち

主人公の茉莉(まつり)はもちろんのこと、家族や友人などの登場人物がとても丁寧に描写されており、一気に物語の世界に惹き込まれます。

ふとしたセリフに登場人物の喜怒哀楽や葛藤がありありと感じられ、まさに「キャラクターが生きている」と感じました。

「私はあなたのことを考えてるの!」と、自身の価値観を押しつけるキャラクターも出て来るのですが、あまりに現実味がありすぎて「あぁ……こんな人いるよなぁ……」と、まるで自分のことのように腹を立ててしまいました。

死と向き合うことで生きることを考える

本作は、不治の病で「余命10年」を宣告された主人公・茉莉(まつり)が、残された10年をどう生きるかという物語です。

病気が判明した当初は、若々しくエネルギーにあふれていた茉莉が、入院生活や体調の変化により、少しずつすこしずつ「死の現実味」を感じる描写がとてもリアルで、読んでいるうちにどんどん胸が締め付けられます。

そんな中でも、趣味に打ち込んだり、恋に落ちたり、目標を持って仕事をしたりと、まさに命をかけて生きている姿を見ると、温かい気持ちがあふれるとともに、「自分はちゃんと生きることができているのか?」と考えさせられました。

まさに魂がこもった作品

不勉強を恥じるばかりなのですが、この記事を書くために著者の小坂流加さんのことを調べて初めて、難病を患い『余命10年』の文庫版の編集が終わった直後に病状が悪化し、2017年2月に逝去されたことを知りました。

二〇〇七年六月、弊社より刊行された単行本『余命10年』を
大幅に加筆・修正し、文庫化したものの電子版です。

出典:余命10年 (巻末)

しかも、最初に刊行されたソフトカバー本から、文庫版を編集するにあたっては、闘病シーンなどが大幅に加筆・修正されたそうで、作中に感じたリアルさは、「事実」だったかもしれないのだと理解し鳥肌が立ちました。

 

精一杯、生きる

40代になり涙もろくなったことは自覚していましたが、ボッロボロ泣きながらイッキ読みした本は久々でした。

そして著者の小坂流加さんの境遇を知って、より一層、本作が愛おしくなりました。

あの時の必死さを今言葉にするのなら、『何かを生み残したかった』ということかもしれない。

毎日を、そして自分自身を大切に、精一杯生きたい!」と思える作品でした。